労災保険法の施行規則の改正により、令和3年9月1日から、次のように、特別加入制度の対象を拡大することとされました。一人親方等の特別加入の対象に「自転車を使用して貨物運送事業を行う者」を追加、特定作業従事者の特別加入の対象に、「ITフリーランス(情報処理システムの設計等の情報処理に係る作業に従事する者)」が追加されます。
なお、これらの方は、いずれも第2種特別加入をすることになり、これらの方の第2種特別加入保険料率は、労働保険徴収法の施行規則において、次のように取り決められました。
・自転車を使用して貨物運送事業を行う者……「1,000分の12」
・ITフリーランス……「1,000分の3」
■労災保険の特別加入制度とは
労災保険は、労働者が仕事または通勤によって被った災害に対して補償する制度です。労働者以外の方でも、一定の要件を満たす場合に任意加入でき、補償を受けることができます。これを「特別加入制度」といいます。
■特別加入のメリット
労災保険に特別加入すると、仕事中のケガ、病気、障害または死亡等をした場合、補償を受けられます。
※貨物運送事業は通勤災害の保護の対象ではありませんが、事業の範囲内で自転車を運転する作業、貨物の積卸作業とこれに直接附帯する行為で被災した場合は業務災害として認定されます。
■給付内容
労災保険給付では、以下のような給付金が支給されます。
・ケガ等の治療費などの療養費
・ケガ等で休業する際の休業期間の給付
・治療後に障害が残った場合の給付
・お亡くなりになった場合の遺族への給付 等
■対象範囲
これまで、自動車及び原動機付自転車を使用して貨物運送事業を行う者を、一人親方等として特別加入の対象範囲としていましたが、令和3年9月1日からは、自転車を使用して貨物運送事業を行う者も、特別加入の対象になります。
またITフリーランスの対象範囲は、原則として以下の業務・作業をされる方が対象です。
・情報処理システム※1の設計、開発※2、管理、監査、セキュリティ管理
・情報処理システム※1に関する業務の一体的な企画
・ソフトウェアやウェブページの設計、開発、管理、監査、セキュリティ管理、デザイン
・ソフトウェアやウェブページに関する業務の一体的な企画その他の情報処理
※1 ネットワークシステム、データベースシステムおよびエンベデッドシステムを含む
※2 プロジェクト管理を含む
具体的には下記ような方が対象です。
・ITコンサルタント、・プロジェクトマネージャー、・プロジェクトリーダー
・システムエンジニア、・プログラマ、・サーバーエンジニア
・ネットワークエンジニア、・データベースエンジニア、・セキュリティエンジニア
・運用保守エンジニア、・テストエンジニア、・社内SE
・製品開発/研究開発エンジニア、・データサイエンティスト、・アプリケーションエンジニア
・Webデザイナー、・Webディレクター 等
■既存の特別加入団体における留意事項
すでに旅客または貨物の運送の事業に係る特別加入団体として都道府県労働局⾧より承認を受けている団体は、令和3年9月から自転車を使用して貨物運送事業を行う者を団体の構成員として特別加入手続をすることができます。
ただし、当該団体が講ずべき業務災害の防止に関する措置が、自転車に対応した内容になっていない場合は、変更届の提出に併せて、自転車に対応した業務災害防止措置を記載した書類の提出が必要です。
■労災保険特別加入の手続きに関するよくある質問
・自転車を使用して貨物運送事業を行う者
Q:自転車を使用して貨物運送事業を行っている者です。特別加入する場合、どのような手続きが必要ですか?
A:既に貨物運送事業の特別加入団体として承認された団体を通じて、または新規に貨物運送事業の特別加入団体を設立するかの方法で、加入申請書などを所轄の労働基準監督署⾧を経由して都道府県労働局⾧に提出してください。
Q:自転車を使用して貨物運送事業を行っている者です。会社員に近い形で働いている場合は加入できますか?
A:労働契約でない請負等の契約で業務に従事している場合は特別加入することができます。
契約形式に関わらず、実態として労働者と認められる場合は、特別加入をしていなくても労災保険が適用され※、補償を受けることができます。
※この場合事業主は保険料を納めます。
Q:自転車を使用して貨物運送事業を行っている者です。特別加入後、仕事中にケガ等をした場合はどうすればよいですか?
A:請求したい保険給付の請求書を所轄の労働基準監督署等に提出してください。
Q:特別加入団体とは何ですか?
A:同種の特定の事業・作業に従事する方(労働者として認められる方を除く)で構成された団体のことです。
Q:自転車を使用して貨物運送事業を行っている者です。普段は食品の運送をしていますが、時々食品以外も運送することがあります。この場合でも特別加入ができますか?
A:特別加入はできます。今回追加されたのは、自転車を使用して貨物の運送を行う事業なので、運送する貨物の種類の違いによって特別加入の対象から外れることはありません。
・ITフリーランス
Q:ITフリーランスです。特別加入をするには、どのような手続きが必要ですか?
A:既にITフリーランスの特別加入団体として承認をされた団体を通じて、または新規にITフリーランスの特別加入団体を設立して、加入申請書等を所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出してください。
Q:ITフリーランスです。会社員に近い形で働いている場合は加入できますか?
A:労働契約でない請負等の契約で業務に従事している場合は特別加入することができます。
契約形式に関わらず、実態として労働者と認められる場合は、特別加入をしていなくても労災保険が適用され※、補償を受けることができます。
※この場合事業主は保険料を納めます。
Q:ITフリーランスです。特別加入後、仕事中や通勤中にケガ等をした場合はどうすればよいですか?
A:請求したい保険給付の請求書を所轄の労働基準監督署等に提出してください。
Q:特別加入団体とは何ですか?
A:同種の特定の事業・作業に従事する方(労働者として認められる方を除く)で構成された団体のことです。
Q:特別加入団体です。ITフリーランスが新規に特別加入する場合、何か手続きが必要ですか?
A:「特別加入に関する変更届」の提出が必要です。
■加入手続きの流れ
自転車を使用して貨物運送事業を行うご本人または、ITフリーランスで働くご本人から、加入したい団体へ申し込み手続きを行ってください。その手続きを受けて、特別加入団体が所轄の労働基準監督署に「特別加入申請書」または「特別加入に関する変更届」を提出します。最終的に都道府県労働局⾧が受理し、承認します。
この改正について、厚生労働省のホームページに専用のページが設けられています。追加された対象者ごとのリーフレットも用意されていますので、一度ご確認ください。
詳しくは、こちらをご覧ください。
参照ホームページ[厚生労働省]